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Interview 一度入ったらきっと魅了される。おもしろくて濃い人たちとつながる街・広島(レイチェル・ニコルソンさん:アメリカ出身)

ホテルのレストラン前に立ち、エプロン姿で笑顔を見せるレイチェル・ニコルソンさん

広島に移り住み、様々な分野で活躍する G7各国出身の「人」にフォーカスする企画「リレーインタビュー Our Life, Our Hiroshima」。

フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ各国それぞれ異なるバックグラウンドを持つ方々の目から見た広島での暮らしや、広島が持つ魅力をお届けします。

アメリカのメリーランド州で育ったレイチェル・ニコルソン(Rachel Nicholson)さんは、広島市役所での翻訳の仕事をメインに、世界に向けて広島の情報を発信しています。日本語に魅了され、広島に来て15年。ネイティブレベルの日本語力を身につけたからこそ見えてくる、広島の暮らしやコミュニティとは?

ライター:中道薫 撮影:浅野堅一 編集:丸田武史(CINRA. Inc,)

初めての日本語は、出会ったことのない世界だった

レイチェルさんが日本に興味を持ったきっかけを教えてください。

笑顔でインタビューに応えるレイチェルさん

レイチェル:アニメで初めて聞いた日本語の響きが、とてもかっこよかったんです。私はもともと外国語の勉強が好きで、中学生のときからずっとフランス語を学んでいたのですが、日本語はあまりにも私の知っている他の言語と違っていた。今まで出会ったことのない世界だったんです。

当時はまだ高校生でしたが、近所の短期大学で見つけた夜間の日本語クラスに通いました。その授業が楽しくて。そこからメリーランド大学に進学後は、日本語と日本文化を専攻しました。

その後、留学で初めて日本にやってきたそうですね。

レイチェル:はい。2度ほど短期留学やホームステイを経験したあと、3度目の来日では、1年間の交換留学プログラムで広島大学を選びました。各地の有名大学もあるなかで広島大学に決めたのは、給付される奨学金が一番高かったという不純な動機なのですが……(笑)。
当時、広島と言えば、世界史で学ぶ「ヒロシマ・ナガサキ」の情報だけでしたから、正直なところ、住むまでは「現在の広島」のイメージはまったくなかったんです。

初めて住んだのは東広島市で、市街地からちょっと離れ、緑の多いきれいな街だなと思ったのを覚えています。

アメリカでの暮らしと日本での暮らしは全く違いましたか?

身振りを交えてインタビューに応えるレイチェルさん

レイチェル:二十歳で広島に来て以来、ずっとここで暮らしてきたのでアメリカとの単純な比較は難しいのですが、自信を持って言える日本の魅力は、交通の利便性の高さです。アメリカは車社会ですから、私のように運転免許を持っていない人は、誰かに送り迎えを頼むしかありません。バスのような公共交通も、時間通りに来なくて不便なんです。

その点、日本の交通機関はものすごく頼りになりますよね。電車やバス、フェリー、特に広島の中心部なら、自転車だけでもスイスイどこへでも行ける。ものすごく暮らしやすい街だと思います。

広島市内にはたくさんの川が流れていて、特に中区エリアの整備された川沿いが好きです。木々や花が並んでいるなかに、ベンチやちょっとしたイベントスペースもあって、友だちとコーヒーを飲みながらお喋りするような、市民の憩いの場になっています。ランニングコースや橋もあるので、散歩やサイクリングにもぴったりですよ。

濃い人々が集う街・広島

大学卒業後は、広島大学での勤務や広島市内での食堂の経営などを経て、現在は広島市役所でお仕事をされているそうですね。

レイチェル:はい。2019年から国際化推進課の職員になりました。フリーランスとしても活動していて、広島のローカルテレビ全4局での翻訳や英会話でのナレーション、そして広島の伝統芸能「広島神楽」の海外発信を翻訳する仕事をしています。

いろんな方面からお仕事をいただくおかげで、広島の歴史や伝統芸能には、かなり詳しくなったと自負していますね。そんなこんなで今年で広島に来て15年になります。

15年間広島で暮らしてきたレイチェルさんから見て、広島はどんな街でしょうか?

友人と話すレイチェルさん

レイチェル:一言で表すなら、「コミュニティがしっかりとつながっている街」ですね。たとえば、コーヒー好きのコミュニティだったり、飲み屋さんのコミュニティだったり。

よくびっくりされるのが「飲食店で隣に座ったお客さんと仲良くなる」こと。たとえば、店主から「そういえば、この人はこういう仕事で、何かおもしろいことやってるんだよ」と紹介されて、全然知らないまま飲み友だちになっちゃう……なんてことが日常的に起こるんですよね。

以前、東京から初めて遊びにきてくれた友人を、行きつけの飲み屋さんに連れて行ったんです。翌日その子が1人で観光すると言ったら「広島のいいところをいっぱい紹介するから一緒に来て!」と、常連さんを4人くらい集めて連れ出しちゃったんです。初対面なのに(笑)。

いきなり観光案内まで。

メモを取りながら居酒屋の店主と笑顔で会話をするレイチェルさん

レイチェル:ここまで徹底した「おもてなしの心」は、なかなか他の街で見ないですよね。広島には、そんなおもしろくて“濃い人”が集まっていると感じます。

「外国人」ではなく、1人の人として

お話を伺って、人同士のつながりが広島の魅力だとよくわかりました。

取材を受けるレイチェルさん

レイチェル:コミュニティの中に入り込むと、一気に世界が広がります。ただ、つながりの強いコミュニティだからこそ、保守的な部分もゼロではありません。日本語メニューしかない飲食店も少なくないですし。コミュニティが確立されているからこそ、いきなり入っていくにはハードルが高いところもあると思うんですね。

また、広島に限った話ではありませんが、一部の方は、外国人に対するイメージが時代遅れになってしまっているように思います。もう15年広島に住んでいる私でも、いまだに「日本語がお上手ですね」「英語の先生ですか?」と声をかけられてしまう。一部の人は「外国人=英語を話す」と決めつけているようにも感じます。

まだまだそういう人も多いのかも知れませんね......。

レイチェル:どこに行ってもまず最初に、どこの国から来て、日本に何年住んでいて、どうやって日本語を勉強したかを説明しなければいけないのは疲れてしまいます。もちろん、みなさん悪気がないのはもちろん理解しているのですが……。

広島市は「国際平和都市」を謳っているけれど、こうしたやり取りがスタンダードになっているようでは「「国際」平和都市らしくない」と思わざるを得ません。だからこの記事を読んだ方には、初対面で「お仕事は何ですか?」みたいに、“1人の人”として接してくれる人がどれだけありがたい存在かを知ってもらえたら嬉しいですね。

言語を駆使して、新しい世界への「入り口」を作る

翻訳のお仕事のほかにも、広島について発信しているそうですね。

牡蠣と瀬戸内レモン

レイチェル:4年ほど前に趣味で「Hiroshima Food Snob」というSNSアカウントを立ち上げて、広島のグルメを英語と日本語で紹介しています。

海の幸と山の幸がともに豊かで、どこに行っても新鮮で美味しい魚介類や野菜、ブランド牛や豚肉を味わえるのも、広島ならではの魅力。それらの食材を自分で調理してもいいですが、本当に美味しいものを作ろうと努力している飲食店がたくさんあることも知ってほしいと思っています。

私も過去に食堂をやっていたからこそ、個人店がどれほど頑張らなければいけないのかは、よくわかっているつもりです。自分なりにそういった飲食店を応援したい気持ちから、「Hiroshima Food Snob」を始めました。

広島の魅力であるコミュニティも、食文化を介して形成されていると思うので、ぜひ足を運んでみて欲しいです。

最後に、これから先、広島で叶えたい目標はありますか?

微笑むレイチェルさん

レイチェル:天職である翻訳者として、広島を代表する存在になるのが一番の目標です。これまでの経験上、自分が強みを発揮できる領域は国際平和関連や飲食、観光が主ですが、それ以外のものについてももっと学んでいって、日本語だけを話せる人と英語だけを話せる人との架け橋になりたい。

私の日本への入り口になった、日本のアニメの英語字幕のように、自分も誰かのための“入り口”を作れたらいいなと願っています。

プロフィールProfile

レイチェル・ニコルソン
広島大学国際関係学部で翻訳者として勤めた後、広島市内に食堂をオープンし、8年間経営を手掛ける。2019年より、広島市役所 国際化推進課で翻訳者としての仕事を開始。フリーランスでライターや翻訳、モデルとしても活動。ローカルバラエティをはじめとするテレビ番組でナレーターやリポーターを担当するほか、地元の食や店舗、イベント等の取材も手掛ける。個人で「Hiroshima Food Snob」と題したSNSアカウントを運営し、広島のグルメを国内外に発信している。

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